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小規模な者には、小規模な者なりのやり方というものがあります。税金や老後資金も同じです。1年のうち1ヶ月くらいは海外滞在するような年収300万円の自営業者がまとまった老後資金を作るなら、小規模企業共済の制度を使ってうまいことやりましょう。
本記事の内容とベネフィット
- 小規模企業共済で作る1,000万円の受け取り方
- 小規模な自営業者は制度をうまく活用するのが生き方
筆者プロフィール
小規模企業共済は掛金1,000円から始めました。慎重にね。
参考
- 中小機構 小規模企業共済
- 小規模企業共済で積立と節税!メリットやデメリット、どんな人が入るべきか?税理士がわかりやすく解説!【年金崩壊に備える①】 2019年06月13日 税理士大河内薫の税金チャンネル
- なぜ、私はiDecoよりも小規模企業共済をオススメするのか?【所得税確定申告と節税】 2020年01月25日 税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士
備考
- 当ブログでは資金拘束のない資産形成制度である「つみたてNISA」を優先して取り組むことをおすすめします。
- 本記事は、LIFESTYLE No.03「マイクロ法人社長と個人事業」のMONEYカテゴリーとしても執筆したものです。詳細はLIFESTYLEカテゴリーと下記の記事からご覧ください。
https://shoheyblog.com/lifestyle-03
小規模企業共済で老後資金を作ろう
要点:毎月2万円を積み立てて1,000万円を作る
小規模企業共済は、「積み立てを20年以上続ける」と決めた自営業者なら老後資金を作るちょうどいい制度になるでしょう。
小規模企業共済の概要は、中小機構のサイトを直接ご覧ください。解説しているYouTuberさん達の動画も今はたくさんありますので、このShohey Blogでは概要の抜粋のみとします。元の情報源はよ〜く読んでくださいね。
将来の備え&節税
今日からおトク、未来もナットク国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。現在、全国で約147万人*の方が加入されています。掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。将来に備えつつ、契約者の方がさまざまなメリットを受けられる、今日からおトクな制度です。
*2020年3月現在
この制度を使って毎月2万円の積み立てをすれば老後の資金を用意しやすくなります。
理由:積み立て中も受け取り時も節税できてお得
毎月2万円の積み立てを20年以上続ければ、節税ができてお得です。積み立てているその期間中も節税ができるし、受け取る時も1,000万円を税金0で一括受け取りすることが可能だからです。
小規模企業共済の制度の中で積み立てるお金は、確定申告の時に「小規模企業共済掛金控除」として使うことができます。年間24万円積み立てれば、その24万円を控除としても使えちゃいます。つまり、節税できる貯金になるわけです。
積み立て時
老後と節税だけを考えればその通りです。しかし小規模企業共済の最大のデメリットは、資金が拘束されることです。原則、65歳になるまでは引き出しができません。老後のためにたくさん積み立てをできたとしても、今現在の生活で使うお金が少なくなるのは本末転倒です。
このShohey Blogで例とする小規模企業共済の毎月の掛金は、つみたてNISAの掛金毎月3.3万円以下です。なぜかと言うと、資金拘束されていないお金の方を多くしておきたいからです。若いからだは若いうちだけです。過去の時間は取り戻せません。若いうちに使えるお金は使うべきです。
受け取り時
基本的には、65歳になるまで個人事業主として働き続け小規模企業共済掛金を毎月積み立てることを前提としています。65歳になれば積み立てたお金は「共済金B」として引き出すことができます。
大切なのは貯めたお金の引き出し方です。なぜなら、引き出し方によって税金を払う必要が出てくる可能性があるからです。小規模企業共済で貯めたお金の受け取り方はいくつかありますが、本記事では、一括で全額を受け取ることにします。
この受け取り方によって確定申告の時に「どんな種類の所得になるか」が変わります。一括で受け取ると退職金として扱われます。そのため確定申告では「退職所得」として申告します。年金のように2ヶ月に1回受け取る場合は公的年金と同じように「雑所得」として申告します。
ここで嬉しいお知らせです。20年以上積み立てを継続して作り上げたこの約1,000万円は、税金を払わずにそのまま1,000万円丸ごと受け取ることができちゃいます。退職金をもらうときに退職所得控除が適用されるからです。せっかく貯めた退職金だから税金を取りすぎないようにしてくれているわけです。
それでは実際に具体例を見てみましょう。
具体例:30歳から65歳までの35年間、毎月2万円
それでは、小規模企業共済の受け取りまでのシミュレーションをしてみましょう。今回はLIFESTYLE No.03「マイクロ法人社長と個人事業主」を例にします。
積み立て方
西暦 | 年齢 | 行動 |
---|---|---|
2021年 | 30歳 | 積み立て開始、毎月2万円 |
2056年 | 65歳 | 積み立て終了 |
納付月数422ヶ月、掛金844万円が1,015万円の共済金になる。共済金B老齢給付で受け取る |
iDeCoと違って、小規模企業共済は掛金を自分が選んだ商品で運用はしません。中小機構が運用してくれて、元本割れの心配はありません。安心できますね。令和2年7月に公表された運用状況によると、平均利回り1%ほどで運用されているようです。
受け取り方
積み立て開始から35年後には、約1,000万円になっている共済金を一括で退職金として受け取ります。この1,000万円を受け取るときは税金など払う必要がありません。退職所得控除の額の範囲内だからです。退職所得控除額は下記の通りです。
退職所得控除額:800万円 + 70万円 × (35年 – 20年) = 1,850万円
参照:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
35年かけて積み立てた退職金が1,850万円以下なら非課税です。今回の例では、受け取る金額は1,000万円なので非課税で1,000万円まるまる受け取れます。
これで預金口座の残高が一気に増えますね。65歳になる時には、つみたてNISAの運用でも1,000万円以上の資金が作れているはずです。小規模企業共済とつみたてNISAを合わせれば自助で2,000万円の資産を作ることができますね。
退職所得控除を活用して非課税で1,000万円を受け取るべし!
あとは35年後に「国民年金の受給開始年齢は80歳です〜」とかって改悪していないことを祈るのみ・・・。
もし国民年金の受給開始年齢が遅くなったら・・・
上記の例では65歳で1,000万円を一括で受け取りました。確定申告では「退職所得」として扱われます。おまけのシミュレーションとして、国民年金の受給開始年齢が2021年現在の65歳から75歳になってしまった場合を考えてみましょう(考えたくないけどね・・・)。
75歳まで公的年金(国民年金)を受け取ることができない場合、自分自身で75歳までの生活費を作ることになります。あぁ、恐ろしい・・・。そんなことになってしまったら、小規模企業共済で作った1,000万円の受け取り方を一括の退職金としてではなく分割して年金のように受け取りましょう。
65歳以上で受け取る共済金Bで10年分割なら、2ヶ月で17.7万円を取り崩します。1年で106万円の受け取りです。300万円以上の小規模企業共済で作ったお金は、分割して受け取ることができます。
この場合、確定申告では「雑所得 公的年金等」として扱います。65歳から10年かけて受け取っていけば、公的年金の年間控除額110万円が適用されます。年間の受け取り金額が110万円以下なら税金を払わなくて済みます。
まとめると、65歳から75歳まで小規模企業共済で作った1,000万円を年金として受け取り、75歳からは国民年金を受け取る流れです。どちらの受け取り方が良いかは、実際に受け取る時期の税制度によって変わるかもしれないのです。覚えておきましょう。
まとめ:小規模なりに老後の資金は作れる!
小規模企業共済は出口戦略(受け取り方)に気をつければ大成功です。毎月2万円以下の掛け金で積み立てを20年以上継続すれば、税金に悩まない資産が作れるはずです。65歳の受け取り時に非課税でお金を受け取れるのは「退職所得」なのか「公的年金等」なのかは、状況次第です。僕たちのライフプランと日本の年金制度状況との兼ね合いで最善の選択をしましょう。