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良いですねえ、オーストラリア。ところで、どの銀行で貯金していますか?海外移住するなら使えなくなるかもしれませんよ?ということで、今回は海外へ引っ越しを考えている人向けです。
本記事の内容
- 日本の金融機関は非居住者になると不向き
- 移住しても利用できる銀行と使い方の紹介
筆者プロフィール
1年以上の世界一周をしようと考えていた時に「住民票を抜く(非居住者になる)」ことによる影響を知ったのがきっかけで調べるようになりました。
居住者と非居住者
まず「居住者」と「非居住者」の違いはご存知ですか?国税庁に掲載されている所得税の観点から居住者と非居住者の違いを見ていきます。
所得税法で、「居住者」とは、日本国内に「住所」があるか又は現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。
居住者(非永住者を除く)は、所得が生じた場所が国の内外を問わず、そのすべての所得についてわが国において所得税を納める義務があります。
(中略)
一方、「非居住者」とは、居住者以外の個人をいい、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)に限って所得税を納める義務があります。
参照:国税庁
一般的な目安としては、1年以上を海外で生活する人たちは日本の非居住者と扱われますね。1年以上日本に住まないなら住所は抜く人がほとんどでしょうし。
海外移住をするということは非居住者になると捉えることになるはずです。では、当初の質問に戻ります。
オーストラリア移住のために日本の銀行で貯金をしている移住希望者さん。日本居住者として銀行を利用していますが、非居住者になってもその銀行は利用できますか?
答えは、その銀行によりけりです。
金融機関は居住者向けのサービス
このブログで推奨しているネット銀行を例にしてみます。ネット銀行で広く使われているのは、楽天銀行や住信SBIネット銀行などです。「楽天経済圏」という言葉もある通り、楽天銀行ユーザーは年々増えているようです。公表されている2020年5月末時点の楽天銀行の口座数と預金残高をご覧ください。
口座数 | 預金残高 | |
5月末日時点 | 8,932千口座 | 39,077 億円 |
参照:楽天銀行
楽天経済圏では買い物や銀行、証券、クレジットカード、電気、通信など多くの支出を楽天の中で済ませられます。そのため、この経済圏の中で使用できる楽天ポイントを貯めやすいので節約効果もありユーザーが増えているわけです。
では、非居住者となった時にこの楽天経済圏の中にある下記の金融系3社は使用できるのかを確認します。
- 楽天銀行
- 楽天証券
- 楽天カード
楽天経済圏の使用状況
- 楽天カードで日常の支払いをする
- 楽天銀行が楽天カードの引き落とし銀行
- 楽天証券でつみたてNISAを継続、支払いは楽天カード
オーストラリアに移住して日本の非居住者となると利用状況は下記のようになります。
- 楽天銀行は解約
- 楽天証券は取引制限
- 楽天カードは継続使用可 (解約必須等の明記はない)
居住者 | 非居住者 | |
---|---|---|
楽天銀行 | ||
楽天証券 | / | |
楽天カード |
楽天カードをはじめとした日本のクレジットカードは日本の銀行を引き落とし先口座として選ぶことになります。楽天銀行を解約した場合、楽天カードの引き落とし先を非居住者でも利用できる銀行に変更する必要があります。
楽天証券でのつみたてNISAは、5年以内に日本に帰国しない場合は一般口座(投資商品で利益が出ると課税)に移動します。
NISA・つみたてNISA口座のお取扱い
NISA・つみたてNISA口座を継続利用するには一定の条件があります。
また、出国前日までに所定の書面を当社が受領している必要がございます。
出国中に、NISA口座での保有商品の非課税期間が終了した場合は一般口座に払出しとなります。
つみたてNISA口座での保有商品は、書面提出日から起算して5年を経過する日の属する年の12月31日までに帰国されない場合、その時点で一般口座に払出しされます。
【例】2019年5月30日提出された場合2024年12月末
20年近くの長期投資により作り出した利益を非課税で受け取るというつみたてNISAの旨味はなくなりますね。
まとめると、楽天経済圏は日本居住者だからこそ利用できるものであって、非居住者の状態ではそのメリットは大幅に減ります。理由は、非居住者だからです。
なお、2020年現在、楽天銀行のようなその他のネット銀行も、非居住者となった場合は基本的には解約をすることになります。詳細はお使いの銀行のFAQなどをご確認ください。ご参考に海外送金サービスのTransferwiseの記事も掲載します。
非居住者が利用できる銀行
しかし、非居住者になっても利用できる日本の銀行はあります。わかります?
ソニー銀行とメガバンクです。
これら4行は出国前に手続きをすることで非居住者向けサービスを利用することができます。それぞれの非居住者向けサービスのリンク先を貼っておきます。
海外在住で日本の銀行を使う目的は、
- 日本の家族への振込
- 日本での報酬の受け取り
などが多いでしょう。基本的な機能をこれら4行は満たしているので今のうちに口座開設をしておくのが良いです。特に、ソニー銀行は日本の居住者であっても海外旅行・海外生活をする人には便利な銀行です。
小まとめ
基本的に、日本の金融機関は日本の居住者向けです。非居住者となる場合は、利用可能かを必ず確認しましょう。
また、非居住者になってから新規で日本の銀行口座やクレジットカード発行は難しいようです。日本の居住者のうちに作っておくべしです。
非居住者の利用例
ここで、海外移住している先輩方の日本の金融機関利用例をご紹介します。
クレジットカードの海外旅行保険
このブログでも海外旅行保険が付帯するクレジットカードを持つことを推奨しています。長期間滞在の度に海外旅行保険を契約すると高額になってしまいますからね。年会費無料で海外旅行保険が付帯するのは下記のようなクレジットカードです。
- エポスカード
- REXカード
- Booking.comカード
- 楽天カード
- リクルートカード
どれも日本のクレジットカードですが、非居住者でも利用できるようです(引き落としの銀行口座は日本の銀行)。これらのカードを使って最長270日の海外旅行保険を適用させることができます。
必要なもの
- 海外旅行保険自動付帯のカード(エポスカードなど)
- 海外旅行保険利用付帯のカード(楽天カード、リクルートカード2枚)
手順
- 日本出国前に楽天カードで航空券などの旅費を支払う
- 利用付帯により日本出国後の3ヶ月は海外旅行傷害保険が付帯される
- (エポスカードなども自動付帯で日本出国後の3ヶ月は海外旅行傷害保険が付帯される)
- 海外生活3ヶ月経過前に、1枚目のリクルートカードで公共交通乗用具の料金を支払う
- 利用付帯により利用時から3ヶ月は海外旅行傷害保険が付帯される
- 海外生活6ヶ月経過前に、2枚目のリクルートカードで公共交通乗用具の料金を支払う
- 利用付帯により利用時から3ヶ月は海外旅行傷害保険が付帯される
- 海外滞在9ヶ月(約270日)まではクレジットカードの海外旅行保険が適用される
①の期間中の保険金額
エポスカード | 楽天カード | |
---|---|---|
傷害死亡・後遺傷害 | 最高500万円 | 最高額2,000万円 |
傷害治療費用 | 200万円(1事故の限度額) | 200万円(1事故の限度額) |
疾病治療費用 | 270万円(1疾病の限度額) | 200万円(1疾病の限度額) |
賠償責任(免責なし) | 2,000万円(1事故の限度額) | 2,000万円(1事故の限度額) |
救援者費用 | 100万円(1旅行・保険期間中の限度額) | 200万円(年間限度額) |
携行品損害(免責3,000円) | 20万円(1旅行・保険期間中の限度額) | 20万円(年間限度額) |
②と③の期間中の保険金額
リクルートカード | |
---|---|
死亡・後遺傷害 | 最高2,000万円 |
傷害治療費用 | 1回の事故につき100万円限度 |
疾病治療費用 | 1回の病気につき100万円限度 |
賠償責任 | 1回の事故につき2,000万円限度 |
救援者費用 | 100万円限度 |
携行品損害 | 1旅行中20万円限度 保険期間中100万円限度 |
参照:エポスカード、REXカード、Booking.comカード、楽天カード、JCBカードのおすすめ保険
銀行の使い分け
日本のクレジットカードで支払いをした場合、引き落としは日本の銀行からになります。しかし、海外生活でずっと日本の銀行を使い続けるのはサービスの制限やら手数料やらなんやらを考えると不便です。
そのため、海外生活の先輩方は銀行をうまく使い分けて不便さを解消しているようです。例えば、下記のような使い方です。
- 日本の銀行
- 移住先の銀行
- 国境なき銀行
日本の銀行は、前述したように、非居住者向けにはソニー銀行やメガバンクが選択肢になるでしょう。日本国内の振込や受け取りに使用します。
移住先の銀行には、移住先がオーストラリアであれば、Commonwealth BankやAustralia and New Zealand Bankingなどで口座開設をして現地生活用に使います。
(勝手に名付けてみましたが)国境なき銀行は、もともとその土地の非居住者であっても口座開設ができ利用できる銀行です。例えば、香港のHSBCです。HSBCはイギリスの銀行で、香港では香港紙幣の発行もしている大手銀行です。地理的に日本から近いこともあり口座開設ツアーなども盛んですね。
海外移住や多拠点生活を考えると、移住先現地の銀行口座も必要ですが国境なき銀行のようにサービスが途切れない銀行も必要に感じますね。
まとめ
日本の金融サービスは日本居住者向けであることが多いです。非居住者になっても継続利用するには、しっかりと事前準備をしましょう。ご利用は計画的に。
では、計画的な移住準備を!