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2021年8月現在、日本には同性婚の制度がありません。同性婚がなければ同性カップルは法的には「親族」として扱われません。現時点で同性カップルが「親族」になる方法と問題提起の記事です。
本記事の内容とベネフィット
- 日本で同性カップルが法的に親族になる方法
- パートナーとの話し合いが何より大切ですよ
筆者プロフィール
備考
- 2021年8月現在の法制度を参考にしています。
- 本記事でのカップルは「男(日本国籍)と男(外国籍)」のゲイカップルを想定しています。
- 現行制度を調べてはいますが、専門的な知識が多いので解釈の間違いがある場合がございます。ご了承ください。
参考書籍
- 南和行『同性婚 私たち弁護士夫夫です』(祥伝社、2015年)
- 小島妙子『内縁・事実婚・同性婚の実務相談 多様な生き方を支える法律, 社会保障・税金』(日本加除出版、2019年)
- 今井多恵子 坂和宏展 市川恭子 安井郁子 竹下さくら 『事実婚・内縁 同性婚 2人のためのお金と法律 ~法律・税金・社会保険からライフプランまで~』(日本法令、2015年)
- 東京都弁護士会 性の平等に関する委員会セクシャル・マイノリティ プロジェクトチーム『セクシャル・マイノリティの法律相談 LGBTを含む多様な性的嗜好・性自認の法的問題』(ぎょうせい、2016年)
要点:養子縁組で法的な親族にはなれる、でも、なんか違う
同性婚が認められていない日本で同性カップルが法的に親族になる方法の一つは養子縁組です。
養子縁組は、自然な血縁関係のない者同士の間に「法的な親子関係」を作る制度で、婚姻とは性質が異なりますが、同性カップル間の「親族関係」を作り出すことができます。
参照:吉村行政書士事務所
男女カップルのような夫婦としての親族ではありませんが、同性カップルが養子縁組をすることで法的に親族となることができます。法的には親子関係(場合によっては兄弟関係)になりますね。
さて同性カップルの皆さん、快く養子縁組しますか?
理由:「法的に親族」と「気持ち的に家族」の食い違い
養子縁組の普通養子によって親子関係(または兄弟関係)になれば法的に親族となれます。しかし、本当は結婚をして一緒になりたいだけなんだよな〜と思っている当事者が多いはずです。というか、みんなそう思っているはずです。
日本で同性婚が認められていれば、普通に結婚して夫夫(ふうふ)として親族になってます。現行の各自治体のパートナーシップを使ったり実際に同棲をしていても法的に親族と扱ってくれないから、わざわざ養子縁組なんて遠回しな制度を使っているんです。
「早く結婚をしろ」などと勝手な価値観を押し付けてくる一部の知性の低いおばさん・おじさん、こんな変な状態に置かれている同性カップルの気持ちがあなたにわかりますか?
それでは、Shohey Blogらしく日本国籍と外国国籍の同性カップルのケーススタディを見てみましょう。
具体例:日本国籍と外国国籍の同性カップルの場合
相手が日本国籍🇯🇵 | 相手が外国国籍🌏 | |
自分が日本国籍🇯🇵 | 🇯🇵このカップル🇨🇳 | |
自分が外国国籍🌏 |
ここでは日本国籍と中国国籍の国際ゲイカップルを例に養子縁組の検討をしてみます。この二人の気になっていることは大きく下記の二つとします。
前提
- 法的にも親族になって一緒に暮らしたい
- 中国国籍のパートナーの就労ビザ以外のビザの可能性
想定
養子縁組によって親子関係になれば法的に親族となります。日本人パートナーさんが年上であれば自動的に日本人パートナーさんが養親になり中国人パートナーさんが養子になります。
ここで気になるのは外国人である中国人パートナーさんは、この養子縁組によって日本に在留できるのかどうかです。通常、外国籍の人は長期滞在するためのビザが必要です。日本人パートナーさんの養子になれば問題なく日本に暮らせるのか?答えがあります。
【普通養子】 日本人、永住者、特別永住者、定住者が扶養する外国籍の養子(ただし6歳未満に限る)に対しては「定住者」のビザが与えられます。
【特別養子】 日本人の親子と同等視されますので「日本人の配偶者等」のビザが与えられます。
以上からお分かりのように、養子となる外国人が成人の場合、養子縁組により日本に住むための適法なビザが与えられるわけではありませんので、ご注意ください。 養子が6歳以上であれば、外国人配偶者の連れ子の場合は「定住者」、または日本語学校で日本語を勉強するための「留学」のビザを申請することも考えてみましょう。
参照:ムラタ事務所
養子縁組をしたとしても中国人パートナーさんにはビザは発行されないようです。つまり別のビザを持っておかないと日本にいることができないです。日本で外国籍の同性パートナーと暮らすには就労ビザや永住権を取ってもらうのがやはり王道でしょうね。
COVID19の感染が世界中に広まり海外で働いていた日本人も勤め先の会社が倒産したり解雇にあったりして帰国を余儀なくされた人もいます。そう考えると就労ビザ以外でもその国に残る方法が欲しいと感じるのは当然です。しかし養子縁組では無理でした…。
判断
(パートナーとの話し合いや置かれている状況にもよりますが)僕がこの日本人パートナーさんの立場なら養子縁組はしないと思います。下表にもあるように、メリットよりも手間の方を強く感じるだろうと思われるので。養子縁組であれなんであれ「親族」になりたいかどうかはカップルによって答えが変わります。
養子縁組 | |
---|---|
法的な親族 | |
ビザの発行 | – |
僕が養子縁組をしないであろう理由のもう一つとして、(同性婚ができてほしいと願っているが故に現行の養子縁組の制度で)気になる点があります。
ちなみに現民法は、養親子の関係にあったものは、離縁をして親族関係を終了した後でも婚姻することができないと規定しています(民法736条)。遠い将来、日本にもしも同性婚の制度ができた時、養親子関係にあったことはリスクとなる、と考え、「自分(たち)は養子縁組をしない」と言う人もいます。
参照:相続会議
養子縁組は離縁をすれば関係を解消することができます。しかし、現行の法の下では離縁した後でその人との同性婚は認められません。さすがに同性婚が認められたらこのような足枷はなくなるとは思いますけどね、でもちょっと気になっちゃうんですよね。
現在の日本の環境なら、法的に夫夫(ふうふ)としてではなく「同居人」のようなかたちで同棲するのが良いかなと僕は感じます。法的には他人になります。法的に親族でないと契約やお金絡みで不都合が生まれやすくなるので、公正証書などで取り決めをするのが対策でしょうか。
まとめ:現時点では養子縁組が選択肢だが、同性婚に期待したい
2021年8月現在、日本では同性カップルが法的に親族とみなされるには養子縁組が大抵の人には選択肢となるでしょう。するかしないかは人によってそれぞれです。する人もしない人も本当に望んでいるのは同性婚が早くつくられることです。気持ちは同じです。